生成AIと著作権

弁護士 渡部 源

 

第1 生成AIにまつわる問題

今、生成AIの進化は目を見張るほどです。

「難しい文章を瞬時に要約する。物語のプロットから小説の概要を完成させる。閃いたイメージをすぐにイラストにする。」

これらは、ほんの数年前まで、それぞれの「専門家」にしかできなかったことです。これが誰でも気軽にできる時代になりました。

必要なものは、それこそスマートフォンがあれば十分です。

他方、この技術革新の一方で、法的な問題が生じています。

例えばですが、生成された文章やイラストを、そのままSNSにアップすることは問題がないのでしょうか。

もし、誰かの文章やイラストとそっくりだったら?他のクリエイターや企業の著作権を侵害している場合はないのか?そんな疑問がよぎった方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、生成AIにまつわる法的課題の中でも、「AIと著作権」の問題について、簡単ではありますが、ご紹介したいと思います。

 

第2 生成AIとは

まず、生成AIの仕組みを簡単に(本当にごくごく簡単に)確認してみます

(本コラムは生成AIの厳密な内容の説明を目的とするものではないため、厳密な内容を知りたい方は、

そのような実務書が販売されておりますので、そちらをご覧いただくことをお勧めします。)。

生成AIは、機械学習のうち、深層学習(ディープラーニング)という手法で、データの読み取り方を学習し、学習データを構築します。

これを元に、AI利用者のプロンプト(生成AIに対する「指示」です。)を解析し、学習データと照らし合わせて、生成物(文章やイラスト等)を生成します。

ここで一つ注目すべき点が、学習データ構築の際、第三者の著作物が読み込まれていることがある(著作権法上認められる)ということです。

AI利用者としては、生成物が、「誰かの著作物を参考にして」生成されている可能性があるということは知っておかなければなりません。

 

第3 著作権を侵害するとは?

ここで、著作権侵害かどうかの判断は、「ケースバイケースである。」というお話をします。

著作権侵害の要件として、ある作品に、既存の著作物との①類似性と②依拠性が認められ得る必要があると言われています

(著作権侵害の要件は他にもありますが、本コラムでは割愛します。)。

上記のうち、①類似性については、なんとなくイメージできるかもしれません。

小難しくいうと、生成AIによる生成物が、「表現上の本質的特徴の直接感得」できる場合には①類似性が あるものと言われています。

では、②依拠性とはどういうものでしょうか。

こちらは日常でも聞き慣れない言葉です。

少し砕けた表現をすれば、「既存の著作物をもとにしている」場合に②依拠性があると言われています。

どのような場合に「既存の著作物をもとにした」かについては、ある作品の制作者が既存の著作物の表現内容を認識していたか、

ある作品と既存の作品の同一性の高さ、無意味な部分の共 通性があるか、既存の著作物の著作権者の社会的立場など、諸般の事情を考慮して判断されます。

要するに、①類似性の判断も、②依拠性の判断も、ケースバイケースであり、事案ごとの慎重な判断が求められるということになります。

 

第4 生成物が著作権侵害にあたる場合とは?

生成AIによる著作権侵害の1番のポイントを挙げると、「AI利用者が意図していなくても、著作権侵害が成立し得る。」ということです。

生成AIによる生成物は、プロンプト(AI利用者の指示)を解析して学習データと照らし合わせて生成物(結果)として出力されます。

プロンプトから直接生成されるわけではなく、学習データを介するため、「AI利用者が著作物を認識していないが、

既存の著作物にそっくりなもの(①類似性があるもの)」が生成されることがあります。

この場合、従来の②依拠性の判断では、著作権の保護が不十分なケースが生まれるのではないかと議論されています。

この点に関し、文化庁が「AIと著作権に関する考え方について」(以下「本考え方」といいます。)を公表しており、非常に参考になります。

本考え方を要約すれば、生成物の②依拠性の判断は概ね次のように行われます。

a.AI利用者が既存の著作物を認識していたと認められる場合

生成AIを利用して著作物の創作的表現を有するものを生成した場合(例えば、既存の漫画などの作品名を入力してキャライラストを生成する場合など)には依拠性がある。

その他、既存著作物へのアクセス可能性や、高度な類似性があれば、依拠性が推認される。

b.AI利用者が既存の著作物を認識していなかった場合

AI開発・学習段階で既存著作物の学習をしていた場合には、客観的に当該著作物へのアクセスがあったと認められることから、AI利用者による著作権侵害になり得る(例外あり。)。

c.AI利用者が既存の著作物を認識しておらず、かつ、AI学習用データに当該著作物が含まれない場合

この場合には偶然の一致に過ぎず、依拠性はない。

なかなか難しい表現が使われていますが、注視すべきは、AI利用者が既存の著作物を認識して類似性ある生成物を生成した場合だけではなく、

AI利用者が既存の著作物を認識していなかった場合にも(AI開発段階で構築された学習データから)著作権侵害が成立しうると言及している点です。

 

第5 生成AI進化期の今、気をつけること

生成AIの技術的根幹は、インターネット上も含む既存の膨大なデータを学習していることにあります。

この学習プロセスと、プロンプトとの組み合わせで出力される生成物が、従来の著作権法の議論だけでは説明がつかない「やっかいなこと」を生じさせているとも言えます。

ここで大事なことは、生成AIの利便性を否定することなく、それと同時に、著作権を含む様々な権利侵害等のリスクを把握しておくという意識が大事であると著者は考えます。

例えば、生成物をSNSにアップする際には、その生成物をどのように作ったのか、今一度考えるべきでしょう。

もしプロンプトに既存の作品の固有名詞が入っていた場合、その作品に依拠した生成物(それが文章でも、イラストでも、音楽でも。)になっている可能性が高いです。

その場合、AI利用者は著作権侵害のリスクを認識すべきであり、プロンプトの内容を再考すべきです。

前述しましたが、著作権侵害の議論は「ケースバイケース」です。そして、生成AIによる著作権侵害の議論は、まだ収束しておらず、その行方を注視しなければなりません。

生成AIを利用できる人は、全員がクリエイターになれます。その分、気をつけるべきこと、知っておかなければならない前提知識もあるでしょう。

もしお困りのことがありましたら、ぜひ専門家へご相談ください。

 

渡部 源 弁護士

渡部法律事務所

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注:本コラムの内容は、掲載当時の執筆者の知見に基づくものです。その内容について、神奈川県弁護士会川崎支部は一切の責任を負いません。

また、執筆者の登録情報も掲載当時のものです。

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