- 弁護士コラム
サクラサイト詐欺について解説します
弁護士 加藤 武夫
今回は消費者被害の中から、「サクラサイト詐欺」について解説します。
サクラサイト詐欺は、業者がメール交換サイトを作成し、そこに誘導した被害者に対し、「出会いを求める異性」や、「財産を譲渡したい富豪」、「懸賞金の支払機関」、「余命わずかの入院患者」、「芸能人とそのマネージャー」などの様々な人格を装って、「あなたと連絡先を交換して会いたい」、「あなたに大金を渡したい」、「あなたに悩みを相談したい」といった、金銭欲、性欲、恋愛感情、同情心といった感情に訴えるメールを送信し、それらの内容を信じてしまった被害者から、メール送受信に必要なポイント代金名目で、次々とお金を騙し取る詐欺です。
サクラサイト内では、メール送受信が「1送信=○ポイント=○円」などとされており、被害者は例えば「1億円をあなたの口座へ送金するためにシステムを解除する必要がある、今から○分以内に説明するとおりの手順でメールを返信して欲しい」などと指示され、メールの送受信に必要なポイントを数十万、数百万円と購入・消費してしまうのです。
サクラサイト詐欺の被害はインターネットを通じて全国に及び、川崎市も例外ではありません。川崎市消費者行政センターからも、「SNSで話しかけられた相手はサクラ?出会い系サイトに誘導する手口かも」と題する相談事例を記載し、注意喚起をしています(http://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000089799.html)。
どうしてそんな詐欺に騙されるの?と思う人もいるかもしれません。
しかし、振り込め詐欺しかり、実際に被害にあってみると、詐欺業者は行動経済学でいう「プロスペクト理論」(人の意思決定は絶対値よりも変化や差異に反応しやすく、得よりも損に反応しやすく、損得の金額が大きくなると感覚は麻痺する傾向がある)や社会心理学でいう「返報性」「コミットメントと一貫性」「好意」「権威」「希少性」といった人の心理を巧みに利用し、やりとりを継続せざるを得ない心理状態に陥れるのです。
そんなの詐欺だと立証できるの?と思う人もいるかもしれません。
この点でリーディングケースとなる東京高等裁判所平成25年6月19日判決は、被害者がサイト内で受け取ったメールの内容(見も知らぬ他人に高額のお金をあげる、など)に着目し、その内容は不自然かつ不合理であり、いずれも被害者にできるだけ多くのポイントを消費させ、高額の金員を支払わせる目的である、高額な利用料金を支払わせることによって利益を得るのはサイト事業者しかいない、といった評価から、被害者のメール交換相手は業者が組織的に使用する者(サクラ)であったと認定し、その上で、サクラであることを秘して多額の金員を支払わせたとして、サイト運営業者による組織的な詐欺・不法行為を認定しました。
そんな詐欺の被害は回復できるの?と思う人もいるでしょう。実際、詐欺業者の場合は初めから詐取した被害金を確保するため口座にお金を残さないようにし、一定期間が過ぎるとサイトも法人も行方不明になるということが多くあります。
しかし、インターネットを利用した被害ということは、銀行送金やクレジットカード、電子マネーなど、現金ではない決済手段も利用しているはずです。それら決済手段にかかる銀行、クレジット会社、電子マネー会社、決済代行業者などの関係業者に対する働きかけなどにより、被害回復が実現した例は多数存在します。
さらには口座提供者や被害金の移転先会社などが判明するのであれば、それらを相手方として訴訟を提起することもあり得るでしょう。
何にしても、対応は早い方が望ましい事案です。
時間が経てば、サイト内のメールはおろかサイト自体が消失して証拠が失われたり、サイト業者自体が行方不明になったり、クレジットカードや電子マネーの取消処理可能期間を徒過したりしてしまいます。
サクラサイト詐欺被害に関する主要な窓口として、以下の2つをご紹介します。
1 消費者生活センター
消費者センターには常にサクラサイト詐欺被害を含む多くの相談が寄せられています。川崎市の消費者相談センターのホームページは下記のとおりです。
http://www.city.kawasaki.jp/kurashi/category/16-6-8-0-0-0-0-0-0-0.html
2 サクラサイト被害全国連絡協議会
2011年から活動するサクラサイト被害に取り組む全国の弁護士から構成される協議会であり、先にリーディングケースとして紹介しました東京高等裁判所平成25年6月19日判決も、この協議会の構成員が原告代理人を担当したものです。この協議会自体が相談を受け付けているわけではありませんが、ホームページには加盟する各都道府県の弁護士団体の連絡先が記載されています。
https://sakurahigai.kyogikai.org/
川崎市にも、この協議会の構成員となっている弁護士が複数います。
特に被害金額が大きい事案や早期に法的手段を取る必要がある場合などは、早期に弁護士へ相談されることをお勧めします。
加藤 武夫弁護士
川崎ふたば法律事務所
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注:本コラムの内容は、掲載当時の執筆者の知見に基づくものです。その内容について、神奈川県弁護士会川崎支部は一切の責任を負いません。
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