お金の問題について弁護士が市民の皆さんにお伝えしたいこと

弁護士 松橋正太郎

1 生活保護を受けることは恥ずかしいことではありません。

 生活保護は最大のセーフティーネットです。貯蓄や財産がある方でない限り、健康や生活状況、就業状況などの理由により収入が得られなくなった場合は、誰であれ、生活保護に頼らざるを得ません。

 身近な例を挙げますと、離婚を決意して別居をした主婦の方などが当面の生活のために生活保護を受給することは珍しくありません。そして、離婚協議や離婚調停・訴訟において親権が争いになる場合、生活保護を受けていること自体は特別マイナスな事情とはなりません。

 意外に知られていないことですが、生活保護を受給すると、医療費もかからなくなります。お金の支給はなしで、医療費だけがかからなくなる生活保護もあります。

 例えばうつ病などになってしまって仕事ができなくなり、収入がなくなってしまった方で、当面の生活費もない場合は、生活保護を受給し、うつ病の治療を受けながら、回復して仕事ができる状態になるまで生活保護を受けることも考えられるでしょう。

2 債務整理(任意整理などの分割での支払い、破産など一般を指します。)をするべきかどうかについて知っておいていただきたいこと

 借金などの、お金の問題でいきづまってしまったときは、まず月々の分割で支払っていくこと(「任意整理」と言います。)を考えます。

 任意整理が可能かどうかは、基本的に3年(36回)の月々の分割払いで無理なく返せるかどうかで考えます。業者がOKすれば最大で5年とする場合もありますが、業者も3年以上は嫌がるのが普通かと思います。持ち家を処分したくないなどの破産を避けたい事情がない限り、5年の負担は重いので、慎重に判断しましょう。

 例えば、借金の総額が200万円の場合、3年ですと36回の分割弁済で、1ヵ月に5万5555円の支払が必要になります。毎月の家賃や生活費に加えてこの出費ができるかと考えますと、これは普通の家庭でも相当な負担ではないでしょうか。

 借金が100万円とすると、3年間の36回払いとして毎月2万7777円です。これでも決して軽くない負担かと思われます。

 ちなみに一般家庭のお父さんのお小遣いの平均はちょっと検索してみると、3万6000円~3万8000円ほどのようです。お小遣いと言っても、昼食代や付き合いの飲食代など必要な出費にあてるお金でもあるようです。

 そう考えると、借金は100万円を超えるともうわりと危険水域になってくることになります。

 しかし、破産管財人などをしていて、破産をする人たちの借金の経緯を見ますと、100万円どころか200万円でもまだまだいける、大丈夫と思ってしまって、借金の返済のためにまた別の会社で借金をしたり、カードを使うことをやめようとしない人が多いように感じます。

 借金については、ある程度余裕を持ってギブアップしてください。冷たく聞こえるかもしれませんが、無理な返済のために頑張っても、肉体的にも精神的にも消耗するだけですし、早い方がお金を貸した方に対する迷惑も結果的に少なくなります。再出発には早い方がいいです。どうしていいかわからないときは、弁護士などの専門家に相談をしてください。

 銀行や消費者金融から借りられなくなったからといって、親戚や友人から借りようとはしないでください。大事な家族、友人までも失うことになりかねません。

 見方を変えると、現在、これだけ銀行や消費者金融が連日テレビやネットでキャッシング(借り入れ)のCM・広告をしているのに、「苦しいから、どうしても必要だから、お金を貸してくれないか」と言ってくる友人や親戚縁者は注意が必要です。その人は、まともな業者からはもう借り入れができない、「貸しても返せない人」である可能性がきわめて高いからです。

 そもそも、本来借り入れとは、事業を始める場合など、お金を稼ぐ見通しは立っているけど、元手がない…という方がするものであって、生活費やお小遣いの不足のために5%から20%の利息を払うことを前提に借り入れをするのはまったく合理性がありません。単にお金(利息)を食べる虫を飼っているようなもので、余計な負担を背負い込んでいるだけではないでしょうか。

 借り入れをしなければならないと思うほど、生活において困ることがあれば、生活保護などを前提に市役所・区役所の福祉課に相談したり、弁護士などに相談をしてみてください。

松橋 正太郎弁護士

松橋法律事務所

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注:本コラムの内容は、掲載当時の執筆者の知見に基づくものです。その内容について、神奈川県弁護士会川崎支部は一切の責任を負いません。また、執筆者の登録情報も掲載当時のものです。

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