写真やイラストの著作権-その画像、使っても大丈夫?

弁護士 引地麻由子

1 写真やイラストにも著作権があります

最近では、パソコンの普及により、誰でも簡単に文書の作成ができるようになりました。

そのため、ホームページやチラシ・パンフレットなどの販促資料を、業者に依頼しないで自分で作成している人も多いようです。

しかし、こういった資料を作成する際には、他人の著作権を侵害しないように気を付けなければなりません。著作権とは、著作物を創作した人(著作者)が持っている権利で、文章や音楽などのほか、写真やイラストの一つ一つにも著作権が存在しています。

そのため、ホームページや資料の中に写真やイラストを掲載する場合は、それぞれの著作権がどうなっているのか確認する必要があります。この確認を怠ると、予期せぬトラブルに巻き込まれてしまうこともあるのです。

このコラムでは、写真やイラストに関する著作権トラブルの事例と、その予防方法について解説します。

 

2 実際に起きた著作権トラブルの例

先にも述べたように、写真やイラストにも著作権がありますので、権利者に無断で利用しますと、著作権侵害にあたる可能性があります。また、場合によっては、高額の利用料金を請求されることもあります。

私の個人的な印象ですが、ここ数年、インターネットから入手した画像(写真やイラスト)の利用をめぐってトラブルになり、相談に来られる方が増えているように思います。

ここでは、具体的な事例を2つご紹介します。

(事例1)インターネットで検索して見つけた写真を、学習塾の教材として利用したところ、写真を管理している団体から高額の利用料金を請求された。

(事例2)インターネットで検索して見つけたイラストを、会社の広報誌に掲載したところ、イラストの著作権者から高額の利用料金を請求された。

 

3 イラストや写真を安全に使用するには

それでは、著作権の問題を心配することなく、イラストや写真を利用するにはどうすればよいのでしょうか。これには、例えば以下の3つの方法が考えられます。

① 自分で撮影した写真や、自分で描いたイラストを使う。

これらの写真やイラストは、自分自身に著作権がありますので、どのように利用しても著作権侵害の問題が生じることはありません。

② 権利者から利用の許可を得た上で使用する。

写真やイラストの権利者(著作権者、管理団体等)に連絡し、事前に利用の許可を取る方法です。利用料金が発生する場合もありますが、許可を取っていれば安心して利用することができます。

③ いわゆる「フリー素材」を利用する。(ただし、利用条件にご注意)

インターネット上で公開されている写真やイラストの中には、「著作権フリー」「ロイヤリテフリー」等と表記されているものがあります。これらは、権利者が一定の範囲で利用を認めているもので、一般的に「フリー素材」と呼ばれています。

ただし、注意して頂きたいのですが、「フリー素材」であるからといって、著作権を完全に無視してよいわけではありません。中には、商業的な利用を禁止しているケースや、画像の加工を禁止しているケースなど、様々な条件を設けている場合もあるからです。

このような利用条件は、「利用規約」や「利用上のご注意」に説明されていますので、事前によく確認し、それに従って利用することが大切です。

また、いくら「フリー素材」と書かれていても、利用規約が見当たらないものや、権利者が不明なものは、利用を控えたほうが安全でしょう。

実際の裁判例の中にも、インターネットで検索して見つけた写真を「フリー素材」だと思って利用したところ、実際には著作権が放棄されておらず、著作権侵害による損害賠償を命じられた事例があります(東京地裁平成27年4月15日判決ほか)。

 

4 「引用」なら著作権侵害にならない?

著作権侵害にも例外があり、例えば、著作権法上の「引用」に該当する場合には、著作権の侵害に当たらないとされています(著作権法32条1項)。

しかし、「引用」に当たるかどうかの判断は非常に専門的なもので、実際に裁判を起こさないと結論が出ないこともあります。ですから、「この程度なら『引用』だから著作権侵害にならないだろう」と安易に自己判断することは避けたほうがよいと思います。

 

5 終わりに

以上、写真やイラストの著作権をめぐる問題について解説しました。皆さんも是非、著作物に関するルールを守って正しく利用するように心がけて頂きたいと思います。ご不安な点がある場合は、おひとりで悩まず、著作権を取り扱う専門家にぜひご相談ください。

 

引地 麻由子弁護士

川崎グリーン法律事務所

〒210-0007

川崎市川崎区駅前本町15-5
十五番館ビル1002

 

注:本コラムの内容は、掲載当時の執筆者の知見に基づくものです。その内容について、神奈川県弁護士会川崎支部は一切の責任を負いません。

また、執筆者の登録情報も掲載当時のものです。

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