弁護士1年目の奔走

弁護士 有馬 大稀

 

1 はじめに

神奈川県弁護士会川崎支部ホームページの弁護士コラムでは、定期的に市民の皆様に向けた法的な知識をお届けしております。

今回のコラムでは、少し趣向を変えて、弁護士1年目である私が、普段どのような業務を行っているか、生活をしているかなど僭越ながらお伝えさせていただければと思います。

 

2 弁護士になるためには

弁護士の資格を得るためには、ご存じのとおり司法試験に合格しなければなりません。その司法試験を受験するためには、法科大学院を修了するか(次年度の司法試験からは、法科大学院の最終学年時に受験することができます。)司法試験予備試験に合格することが必要になります。

私は、中央大学を卒業後、一橋大学の法科大学院に進学し、合計6年間法律学を学びました。大学院卒業後に受験することとなる司法試験ですが、私が受験した年は、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年で、司法試験も延期するという稀有な事態が発生しました。そのような困難と闘いながらも、私は何とか試験に合格することができました。

司法試験を合格したことを親戚や友人に報告すると、「朝から晩まで勉強してたんでしょ」とか「遊ぶ時間とかなかったでしょ」などと言われることがありますが、私の場合は、そうでもなかったような気もします。もちろん勉強もしましたが、バイトをしたり、サークル活動に熱を入れたり、友人と旅行にも行きました。いわゆる「フツー」の学生です。

司法試験合格者の増加に伴い、弁護士資格取得の難易度は下がっているともいえます。しかし、市民の皆さまの目線に近い、「フツー」で親しみやすい弁護士が増えていることも事実かもしれません。

 

3 座学と実務のギャップ

司法試験に合格すると、約1年間、司法修習生という身分で裁判官・検察官・弁護士という法曹三者の実務研修を経ることになります。特に、私は社会人経験なく、司法修習に臨むことになったので、様々な壁にぶつかることになりました。社会人としてのマナーはもとより、司法試験には出題されない法令の解釈・適用、裁判の実際の運用などなど座学では学ぶことのできなかった実務を体感し、一つ一つの経験を糧とすることができたと思います。

弁護士は、法律の専門家ですが、必要とされる知識は法律学にとどまらないと考えます。政治、経済、税務、不動産に関する知見など浅くとも広い知識が求められ、その教養により、様々な依頼者の要望に応えることができるものだと思います。

 

4 日々の研鑽

私が勤務している事務所は、いわゆる街弁であり、1都3県の依頼者を中心に一般民事事件や家事事件を多く手掛けています。婚姻費用の分担に関する事件についていえば、最初は、その計算方法がわからなかったり、当事者双方の源泉徴収票や確定申告書の見方を理解できていなかったりしました。また、相続に関する事件では、戸籍謄本の取得方法や相続税に対する大まかな知識など基本的な理解が不足していたと思います。

このような基礎知識は、日々の業務を積み重ねることで経験値を増やし、着実に身に着けることができていると思います。専門書をしっかり理解しながら読むことは決して容易ではありませんが、目から鱗の情報量なので、興味深く学ぶことができています。また、事務所の先輩弁護士に相談したり、話を聞いたりすることで、実際の経験談に基づいて、個別具体的な方針決め、動き方などをイメージすることもできます。さらに、私は、業務に役に立ちそうである理由からFPについて勉強し、試験を受けたりもしました。

神奈川県の多くの新人弁護士は、刑事事件の国選弁護人としての仕事を任されることになります。私もその一人で、逮捕直後から判決までという一通りの刑事手続きを弁護人という立場で経験しました。弁護士なりたてではありますが、若さと活気を活かして、接見に足繫く通ったり、迅速な保釈対応を行ったりと、精神的に不安定な被疑者・被告人のために知恵と体力をもって事件処理に臨むことができました。刑事事件では、まだまだデジタル化が進んでいないので、警察署や裁判所に直接赴かなければならないことが多々ありますが、思い立ったらすぐ行動をモットーに昼夜を問わず対応できる弁護士でいたいと思っております。

 

5 おわりに

新人ではあるものの、職業弁護士であることには変わりはなく、依頼者の方からすれば、期は関係ありません。『弁護士』と聞くと堅苦しいイメージがあるかもしれません。しかし、私の肌感覚としては、市民の皆さまの視線に近く、親しみやすい弁護士が多く存在すると感じています。私もそのような弁護士になれるよう、日ごろの努力を欠かさず、市民の皆さまのお力添えができるよう邁進していきたいと思います。

 

有馬 大稀弁護士

武蔵小杉駅前法律事務所

〒211-0004

川崎市中原区新丸子東3-946-3
MKファーストビル3B

 事務所HP https://mk-ekimae-law.com/

 

注:本コラムの内容は、掲載当時の執筆者の知見に基づくものです。その内容について、神奈川県弁護士会川崎支部は一切の責任を負いません。

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