「川崎市犯罪被害者等支援条例の遡及適用を求める支部長声明」を発表しました。

川崎市犯罪被害者等支援条例の遡及適用を求める支部長声明

 

令和4年1月26

 

神奈川県弁護士会川崎支部     

支 部 長  種 村    求

 

声 明 の 趣 旨

 令和元年5月28日に発生した川崎市多摩区登戸新町で発生した通り魔殺傷事件の被害者等を救済できるよう,川崎市犯罪被害者等支援条例の遡及適用を認める制度設計を構築するよう求める。

 

声 明 の 理 由

1 令和3年12月15日,川崎市犯罪被害者等支援条例が可決・成立した(令和4年4月1日施行)。

 同条例成立により,川崎市において犯罪被害者等の支援体制が整備されることになり,日常生活等の支援をはじめとした犯罪被害者等支援のメニューが増えただけでなく,県条例では補えない部分についても行政による支援が提供されることとなっている。

 当支部としても,条例制定に至るまでの川崎市や市議会等関係諸機関の多大なご尽力に敬意を表するとともに,今後も犯罪被害者等支援のため一層の尽力をしたいと考えている。

 

2 もっとも,同条例の附則においては,「この条例は,令和4年4月1日から施行する。」とのみ定められ,その遡及適用の可能性についてはなんら触れられていない。

 もし同条例の遡及適用がなされない場合,令和元年5月28日に川崎市多摩区登戸新町で発生した通り魔殺傷事件等については,川崎市在住であった被害者を,同条例で救済することができなくなる。

その場合,川崎市に先行して犯罪被害者等支援条例が制定・施行されていた横浜市在住の被害者においては同条例に基づく援助を受けられた一方で,川崎市在住の被害者においては同条例に基づく援助を受けられないという著しい不均衡が生じることとなってしまう。

 犯罪被害者等が受けた被害の軽減や回復に向けた施策の総合的な推進といった同条例の趣旨に鑑みれば,同条例の遡及適用を認めることで,川崎市在住の被害者において,同市と隣接する横浜市在住の被害者が受けることのできる援助と同等の援助が得られるようにすべきである。

 法理論的にも,市民の利益になる場合や,市民の権利義務に不利益がない場合には,遡及適用を行うことも許される場合があり,例えば,犯罪被害者等の支援や,災害からの復興等を目的とした施策においては,遡及適用が行われ得ることが指摘されている。そして,本条例の遡及適用は,まさにこうした目的に叶うものといえる。

 

3 そこで,当支部としては,同事件の被害者等が同条例に基づく援助を受けられるよう,条例施行日の時点において犯罪被害等の発生日から3年を経過していないものについて同条例の遡及適用が可能となることを要綱に定める等の制度設計を構築することを求めるものである。

 

以 上

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